DX・AIの専門業者に何を依頼する?|相談前に企業側で整理した7つのこと
DXやAIを進めようとしたとき、
「自社だけでは分からないので、まず専門業者に相談しよう」
と考える企業は少なくないと思います。
私自身も現在、ある企業の技術顧問として、 技術部門のDX・AI活用について専門業者と連携しながら検討を進めています。
実際に取り組んでみて感じるのは、 専門業者へ相談すれば、自社の課題や進むべき方向まで 自動的に決まるわけではない ということです。
「何か良いシステムはありませんか」
「AIで業務を効率化できませんか」
という相談だけでは、 専門業者側も何を調べ、何を提案すべきなのか判断しにくくなります。
その前に企業側で、
を整理しておく必要があります。
今回は、現在進めている取り組みをもとに、 DX・AIの専門業者へ相談する前に企業側で整理したことをまとめます。
DX・AI実践シリーズ 第3回
システム選定の前に整理したい3つのこと
このシリーズでは、DX・AIの専門業者へ相談する前に企業側で整理しておきたいことを、 「現状」「人材・組織」「専門業者への依頼」の順に3回でまとめています。
システムを選ぶ前に、現在の業務・情報・人材・組織を確認する
DXを進める人材像と、仕事の与え方・育成・組織を見る
STEP 3 専門業者への依頼を整理する 今回
外部へ任せることと、企業側で判断することを分ける
専門業者へ相談する前に整理した7つのこと
今回整理したのは、次の7点です。
まず「どのAIを使うか」から考えない
DXやAIについて調べ始めると、 どうしても製品やサービスに目が向きます。
生成AI、文書検索AI、クラウド、データベース、 PDM、PLMなど、選択肢はいくらでもあります。
しかし、最初に「どの製品を導入するか」を考えてしまうと、 本来解決したかった問題が見えなくなる可能性があります。
私が現在進めている取り組みでも、 最初にシステムを選ぶのではなく、
という順序を重視しています。
前回までの記事でも、この考え方について書いてきました。 専門業者に相談する場合も、この順番は同じだと考えています。
1 そもそも何を改善したいのか
まず必要なのは、 「DXをしたい」「AIを使いたい」ではなく、 何を改善したいのか を整理することです。
例えば、
- 必要な資料を探すのに時間がかかる
- 過去の設計や検討結果を再利用しにくい
- 情報が複数の場所に分散している
- 担当者によって仕事の進め方が違う
- ベテランの知識が他の人へ伝わりにくい
- 同じような調査や確認を何度も行っている
といったことです。
ここで重要なのは、 これらを最初から「原因」と決めつけないことです。
例えば、「検索システムが悪い」と思っていても、 実際にはファイル名や分類方法に問題があるかもしれません。
「若手の能力不足」と思っていても、 仕事の任せ方や育成機会に原因があるかもしれません。
2 現在の業務と情報がどうなっているのか
専門業者へ改善案を求めるのであれば、 現在の状況を説明できる必要があります。
そこで確認するのがAs-Isです。
例えば、
- どのような業務があるのか
- 誰が担当しているのか
- どのシステムを使っているのか
- どこに情報を保存しているのか
- メールやファイル共有をどう使っているのか
- どの業務で時間がかかっているのか
- どこで手戻りが発生しているのか
などです。
ここが曖昧なまま「DXの提案をしてください」と依頼すると、 一般的な提案になりやすくなります。
逆に、現在の業務や情報の流れが見えてくれば、
- 「ここはシステムで改善できる」
- 「ここは運用ルールを変える方が先」
- 「ここはAIを検討できる」
といった具体的な議論がしやすくなります。
3 どこまでを対象にするのか
DX・AIの検討では、最初に対象範囲を決める必要があります。
- 会社全体を一度に変えるのか
- 技術部門から始めるのか
- 特定の業務から始めるのか
- 情報管理だけを先に改善するのか
範囲を決めないまま検討すると、 調査対象も施策も広がり続けます。
私は、最初からすべてを変えようとするよりも、 対象を絞って調べ、効果を確認しながら広げる 方が現実的だと考えています。
特にAIは「何にでも使える」ように見えるため、 対象業務を決めることが重要です。
4 どのような状態になれば「良くなった」と言えるのか
専門業者に依頼するとき、 意外に難しいのがこの部分です。
システムを導入した。AIを使えるようになった。 それだけで成功なのでしょうか。
例えば、
- 情報を探す時間が短くなる
- 過去資料の再利用が増える
- 手戻りが減る
- 特定の担当者への依存が減る
- 新人が必要な情報へ到達しやすくなる
- 案件を進める時間が短くなる
など、業務としての変化を見る必要があります。
企業側がこの観点を持っていなければ、 導入そのものが目的になってしまう可能性があります。
5 専門業者に任せることと、自社で決めることを分ける
ここは、現在の取り組みの中でも 特に重要だと感じている部分です。
専門業者には、企業側だけでは不足している知識や経験があります。
例えば、
- 現状調査の進め方
- システムやクラウドの知識
- データ管理方法
- 他社事例
- AI活用の可能性
- PoCの進め方
- 技術的な選択肢
などです。
こうした専門能力は、 必要に応じて積極的に活用した方がよいと考えています。
一方で、
- 会社として何を優先するのか
- どの業務を変えたいのか
- どの程度の効果を求めるのか
- どこまで投資するのか
といった判断は、企業側が持つ必要があります。
この記事で最も重視していること
専門業者の専門能力を使って計画を具体化する。
しかし、業務判断・優先順位・効果判定は企業側が持つ。
私は、この役割分担が重要だと考えています。
「専門業者に任せればDXを進めてもらえる」という状態ではなく、 専門業者と企業が、それぞれ何を担当するのかを明確にする 必要があります。
6 専門業者と並行して自社で何をするのか
DXを専門業者へ依頼すると、社内では、 「専門業者が調査しているから結果を待とう」 となりがちです。
しかし、その間にも自社でできることがあります。
例えば、
- ファイル名や保存方法を整理する
- 資料の分類方法を見直す
- 業務手順を確認する
- よく使う帳票やテンプレートを整理する
- 部門内で困っていることを集める
- 誰がどの業務を担当しているのか整理する
- 必要な技術や人材を確認する
といったことです。
大きなシステムを導入しなくてもできる改善はあります。
むしろ、こうした整理が進んでいる方が、 専門業者からの提案も具体的になります。
7 最終的に何を成果として求めるのか
「DXについて相談する」だけでは、 最終的に何を成果として受け取るのかが曖昧です。
そこで、専門業者に何を成果として求めるのかも 整理しておく必要があります。
例えば、
- 現状分析
- 課題の整理
- To-Be像
- 短期・中期・長期のロードマップ
- システムやツールの候補
- AIを活用できそうな業務
- PoC候補
- 導入する場合の前提条件
- 次に企業側が判断する項目
などです。
私が特に重要だと思うのは、 単に「○○というシステムがおすすめです」 という結論をもらうことではありません。
専門業者に最初に聞いておきたいこと
企業側から専門業者へ質問することも重要です。
少なくとも、次の点は確認しておいた方がよいと考えています。
- 何を調査するのか
- 調査にはどのような資料が必要なのか
- 誰へのヒアリングが必要なのか
- 最終的に何が成果物として出てくるのか
- 対応範囲に含まれないものは何か
- 次の段階へ進む判断基準は何か
- 自社側では何を準備する必要があるのか
- 導入後、自社側にどのような運用が必要になるのか
こうした質問をすることで、 「専門業者に何をしてもらうか」だけでなく、 「自社は何をしなければならないか」 も見えてきます。
「良い提案をしてください」だけでは難しい
DX・AIの相談では、 「専門家なのだから、最適な方法を提案してほしい」 と思うのは自然です。
専門業者は、 企業側だけでは得にくい外部の知識や経験を持っています。
一方で、
- 会社として何を重視するのか
- どの仕事を変えたいのか
- 現場が何に困っているのか
- どこまで変えるのか
- どの制約を受け入れられるのか
といった自社固有の事情を最も理解し、 最終的に判断するのは企業側です。
専門業者選びより先に考えたいこと
DXについて調べると、 「どの会社へ依頼すればよいか」 という情報もたくさん出てきます。
もちろん専門業者選びは重要です。
しかし、その前に、
- 自社は何に困っているのか
- 何を調べたいのか
- どこまでを依頼したいのか
- 最後に何を判断したいのか
を整理しておかなければ、 専門業者を比較する基準も作れません。
会社によって課題は違います。
専門業者選びで考えたいこと
「最も優れたDX会社を探す」より、 「自社の課題に合った支援をしてくれる相手を探す」
という考え方の方が現実的だと思います。
まとめ|DX・AIは「専門業者へ任せること」から始めない
DXやAIの専門業者は、 企業側にない知識や経験を持っています。
その力を借りることは非常に有効です。
しかし、専門業者へ相談する前に、 企業側でも整理しておくことがあります。
- 何を改善したいのか
- 現在の業務と情報はどうなっているのか
- どこまでを対象にするのか
- 何をもって改善と判断するのか
- 専門業者と自社の役割をどう分けるのか
- 自社で並行して何を進めるのか
- 最終的に何を成果として求めるのか
専門業者にすべてを任せるのではなく、
これが、現在DX・AIの取り組みを進めながら 私が重要だと感じていることです。
まだ取り組みの途中ですが、 今後、専門業者との検討が進み、 どのような考え方が有効だったのか、 逆に何を見直す必要があったのかについても、 守秘義務に配慮しながら記録していきたいと思います。
DX・AI実践シリーズ
第1回|As-Isから始める
製造業のDX・AI導入は、いきなりシステムを選ばない →
第2回|人材・組織を考える
DXを進める技術者に必要な4つの力 →
第3回|専門業者への依頼を整理する
(この記事)
DX・AIの専門業者に何を依頼する? →
自社の場合について整理したい方へ
DXやAIについて、まだ相談内容がまとまっていなくても構いません。 現在の状況を伺い、課題・選択肢・次に確認することを整理します。
DX・AI導入に関する課題整理のご相談
DXやAIについて、
- 専門業者へ相談する前に、自社の課題を整理したい
- 何を専門業者へ依頼すればよいのか分からない
- 提案を受けたが、何を基準に判断すればよいのか整理したい
という段階の企業・担当者の方からの相談を受け付けています。
システム開発やAI導入作業を請け負うものではありません。
現在の状況を伺い、 課題、選択肢、専門業者へ確認すること、 次に判断すべきことを整理します。
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